植物スクラップブック・樹木篇
いちょう イチョウ科  Ginkgo biloba
採取作品 「猫は知っていた」
採取場所 世田谷区内「箱崎病院」
特  徴 日本でも古くから栽培されているが、原産は中国。
丈は30m近くになるものもある。
春先に黄色い花を咲かす。
果実は「ギンナン」。
作品での役割 家の北西の方角の角に近く、
四本の高いいちょうの木が並んだ下あたりに
土がやや高くもり上った所があった。

防空壕だ。

ここから箱崎病院の殺人事件が始まった。

イボタ モクセイ科  Ligustrum obtusifolium Sieb et Zucc.
採取作品 「猫は知っていた」
採取場所 世田谷区、箱崎病院裏「勝福寺」
特  徴 高さは1.5〜2mほど。
5〜6月に白い花をつける。
漢字では「水蝋」と書く。
作品での役割 勝福寺は東京郊外の住宅地に見かける寺としては
中くらいの大きさで周囲はイボタの木の生垣で囲ってあった。

しかし、生垣は荒れ放題。
どこからでも境内に出入りできそうだ。

イワヘゴ オシダ科  Dryopteris hirtipes
採取作品 「林の中の家」
採取場所 S区K町「水原啓太邸」
特  徴 原作では「ウラボシ科」となっていますが、
本当は「オシダ科」の植物です。

現在ではレッドデータブックにのるほどの
稀少な羊歯になっているようです。
作品での役割 スイラン、ツルニンジン、メハジキ、
クルマバハクマ、イワヘゴ・・・。

さえざえとした空気が流れ込んでくる
10月のある夜、雄太郎は万年筆で
カードに草の名前を書きこんでいた。

そこへ一本の電話が・・・。

ここから雄太郎と悦子は事件の謎に挑むのだ。

エノキ ニレ科 Celtis sinensis
採取作品 「遠い絵図」
採取場所 西谷村 三ツ柳家
特  徴 本州や四国、九州に分布する落葉高木。
どのような土壌でも、よく育つ。

赤い実は甘いので、鳥などによく好まれる。
作品での役割 「裏庭のエノキのそばで、
泥棒と旦那さんが格闘していたそうです。」

冴子はりつから父の話を聴きだそうとしています。

カキの木 カキノキ科  Diospyros
採取作品 「光った眼」
採取場所 都下S市「広尾邸」
特  徴 カキは、冬の到来を告げる木のひとつです。

Diospyrosはギリシャ語で「神の食物」。

和名の「カキ」は、「輝き」や「暁」、
または「赤き」の転じたものといわれています。
作品での役割 おばさんのうちは庭に大きなカキの木や
プラムの木があって実がいっぱいなる。

カキやなんかを、もいでくれたことも何度かある。

ほんとうにおばさんは万引きなんかしたのだろうか。

ケヤキ ニレ科  Zelkova serrata
採取作品 「暗い日曜日」
「虹色の犬」
「陽の翳る街」
採取場所 世田谷区内 仁木宅近所の八幡宮境内(『暗い日曜日』)
新宿 新宿御苑(『虹色の犬』)
三杉町 浄泉寺(『陽の翳る街』)
特  徴 山地にも自生がある落葉高木。
高さは20〜30m、4〜5月頃に花が咲く。
作品での役割 ある日曜日、悦子は買い物に出かけた。
駅前の商店街まで行くには、お宮を横切るのが早いので、
悦子は通り抜けようとすると、太いケヤキの木のかげに、
うつぶせに倒れている男性の死体を発見する。(『暗い日曜日』)

せっかくのデートであったが、
いつもと違って涼子は暗い表情をしていた。
潔はいつものデートコースである新宿御苑に向かい、
二人はケヤキの下に腰をおろした。(『虹色の犬』)

さるすべり ミソハギ科  Lagerstroemia Indica
採取作品 「林の中の家」
採取場所 都内「志田晴江宅」
特  徴 木の幹がつるつるしていて、
猿もすべることからこの名前が付きました。
作品での役割 アパートとは別に安ぶしんの小さな平屋が一軒たっていて、
竹垣の中にはそれでも形ばかりは庭らしく、
さるすべりの木なんかが植わっている。

はたして、晴枝は家にいるのだろうか

シキミ モクレン科  Illicium enisetum
採取作品 「猫は知っていた」
採取場所 世田谷区内「箱崎病院」
特  徴 暖かい山地にはえる常緑高木。
日本では宮城県より南であれば、ほぼどこでも見ることができる。
作品での役割 「シキミはモクレン科です。
小喬木というんですが草じゃなくて木ですね。
つやのあるきれいな実がなるんだが、
これは猛毒で子供が食べて死んだりします。
もともと「悪しき実」と呼ばれていたくらいで・・・。」

植物うんちく王・仁木雄太郎の演説はまだまだ続く。

シバヤナギ ヤナギ科  Salix japonica
採取作品 「虹の立つ村」
採取場所 群馬県民宿「上毛荘」周辺
特  徴 春にはきしっぽのような房をつける。
高さは1〜2mの小さな木。
作品での役割 仁木兄妹と3人の子どもたちはドライブに出かけた。
宿泊をしている上毛荘から、山道をおりていくと
広い桑畑が見えてくる。
そんな時、雄太郎が突然こんなことを言いだした。
「あ!シバヤナギだ。珍しく大きな木だ。ストップストップ。」

運転中の悦子は、たびたび駐車させられてイライラ。
しかし好きな植物に夢中な雄太郎は、そんなことはお構いなし。

しゅろ ヤシ科  Trachycarpus fortunei
採取作品 「夏の終る日」
採取場所 巣鴨 小谷亮一のアパート
特  徴 暖かい山野に自生もある常緑高木。
花は5〜6月頃に、黄白色のものが咲く。
九州南部の原産。
作品での役割 三影が彼の部屋にはいると、
熱気がこもって蒸し風呂みたいだった。
窓のガラス戸を開けると、
目の前の板塀の上から突きだしている。
「2〜3本のしゅろの木があるもんで、
すこしでも青いもんがみられていいんです。」

暑い時期の樹木は、涼しさを感じさせてくれます。

じんちょうげ ジンチョウゲ科  Daphne odora
採取作品 「殺人配線図」
「沈丁花の家」
採取場所 武蔵野 「中石宇女乃邸」(『殺人配線図』)
田無 「土崎儀平邸」(『沈丁花の家』)
特  徴 庭に広く植えられる常緑低木。
外は紅紫色、内は白色の花を咲かせ、芳香がある。
3〜4月頃、花を咲かせる。
作品での役割 吉村駿作は塩入哲夫、伸夫と共にレンガの洋館にやってきた。
その館は中石宇女乃の館だった。
門柱にあるベルを押すと、中からお松が顔を出した。
邸内にはいると門から玄関まで敷石道の脇に植えてある
じんちょうげが甘い香りを放っていた。(『殺人配線図』)

春先の甘い花の香りは、とても雰囲気が良いものです。
何も事件が起きなければよいのですが・・・。

チョウジ フトモモ科  Syzygium aromaticum (L.)MERR.et PERRY
採取作品 「猫は知っていた」
採取場所 世田谷区内「箱崎病院」
特  徴 高さ10mまでの常緑の木。
開花直前のつぼみを乾燥させると、香辛料となる。
作品での役割 悦子と雄太郎は門の内側のチョウジの
植込みのかげにしゃがみこんだ。

ユリは急いで2人の目の前を通って門から出て行った。

彼女はそんなに急いでどこへ行くのでしょう。

つつじ ツツジ科  Rhododendron
採取作品 「緋の記憶」
採取場所 吉祥寺「寺井邸」
特  徴 庭などに生える常緑低木。
花は晩春から初夏にかけて咲く。
種類はキリシマ、レンゲツツジ、ホツツジ等がある。
作品での役割 タバコ屋のばあさんは言った。
「庭が広くてね。お池もあったみたい。
つつじの植込みがたくさんあって、季節になると、
そりゃあきれいでしたよ。
真赤な花が、まるで火みたいでした。」 

園美の夢にも出てくるその真赤なつつじは
何を語ろうとしているのでしょう。

ツバキ ツバキ科  Camellia japonica
採取作品 「二人の昌江」
採取場所 目黒区大岡山「長浜竜子邸」
特  徴 ツバキと山茶花は似ているようで、似ていません。

ツバキは春に花が咲き、山茶花は秋に咲きます。
また、ツバキは花がポトリと落ちますが、
山茶花はパラパラと散ります。
作品での役割 二人の並木昌江はどちらが本物なのかわからない。

すると、ひとりの昌江がこんなことを言い出した。
「死んだウサギは裏庭のツバキの木の下に埋めるというので、
わたしは持っていた花模様のハンカチを出して、
これをくるんで埋めてあげてといいました。
いまも埋まっているのではないかと思うのです。」

はたしてこれが決め手になるのでしょうか?

ネムの木 マメ科  Albizia julibrissin
採取作品 「虹の立つ村」
採取場所 群馬県民宿「上毛荘」近くの寺院
特  徴 6〜7月頃、糸を集めたような花を咲かせる。
「ネムの木」の名の由来は、
夜に葉を眠るように閉じることからきている。
作品での役割 仁木兄妹が宿泊した民宿で殺人事件が起きる。
その日の他の宿泊者たちはそれぞれ出かけていたのだが、
一人の宿泊者がお寺のネムの木をスケッチしていた。
雄太郎はのんきにその絵の描写力を誉めてしまう。

ネムの木のスケッチは事件のカギとなります。
ネムの木のいろいろな習性を知っている雄太郎だからこそ、
すぐに気がついたのでしょう。

フヨウ アオイ科  Hibiscus mutabilis L
採取作品 「二人の昌江」
採取場所 目黒区大岡山「長浜竜子邸」
特  徴 暖かい沿海地にも自生する落葉低木。
7〜10月頃、淡い紅色の花を咲かせるが、
たった1日でしおれてしまう。
作品での役割 二人の並木昌江は宇部が差しだした顔の部分の写真について、
それぞれこう言った。
「わたしの高2の夏休み、この家に来たとき、撮ったものです。」
「私が言いたいのも同じです。庭のフヨウの木のそばで、
たくさん花が咲いていました。」

悦子と宇部は、全体の写真をみんなに提示した。
はたしてどちらが本物の昌江なのだろうか?

プラタナス スズカケノキ科  Platanus
採取作品 「遠い絵図」
採取場所 新宿区内
特  徴 街路樹として多く見られる木の一つ。
ちなみに「スズカケノキ」とは、落葉後に集合果がつり下がるところから来ている。
作品での役割 三ツ柳冴子は会社から帰宅しようとすると、
一人の女性の声に呼び止められた。
それは同じ社の庶務課の井上紀江だった。
冴子と紀江は連れだって帰ることにした。
駅に向かう歩道にはプラタナスの枯葉が落ちていた。

作者はプラタナスの落ち葉で「秋」の季節を描写しています。
プラタナス自体はこの事件と全く関係ありません。

プラムの木 バラ科  Plum
採取作品 「光った眼」
採取場所 都下S市「広尾邸」
特  徴 プラムは「すもも」の英名。
「すもも」は「李」のほかに「酢桃」とも書かれ、
基本的には酸っぱい果物です。

以前亡くなった女子プロレスラーに
「プラム麻里子」という選手がいて、
管理人のわたしはファンだったのですが、
彼女の本名は「梅田麻里子」だったので、
てっきり「プラム」は「うめ」のことかと思っていました。
作品での役割 おばさんのうちは庭に大きなカキの木や
プラムの木があって実がいっぱいなる。

カキやなんかを、もいでくれたことも何度かある。

ほんとうにおばさんは万引きなんかしたのだろうか。

マツ科  Pinus
採取作品 「炎いろの記憶」
採取場所 小田原「聖テレジア学園」
特  徴 日本全国で見られる針葉樹。
左の写真は「クロマツ」。
アカマツはマツタケが共生する。
ちなみに花札で松は「1」。
作品での役割 「あれよ、あそこなのよ。
あの大きな松の木、覚えてるわ。
建て物は違うみたい。こんなにきれいじゃなかったわ。」

昔、孤児院にいた谷克子は、
久しぶりに施設に訪れた。
建物も克子もかわってしまっていたが、
松の木だけはかわっていなかった。

ヤツデ ウコギ科  Fatsia japonica
採取作品 「しめっぽい季節」
採取場所 井の頭線沿線・身障児童施設「タンポポ園」
特  徴 常緑低木。日本では東北より南で多く見られる。
和名は葉の容姿から「八つ手」。
しかし、葉の裂片は奇数なことが多いので、
本当は「ナナツデ」や「ココノツデ」なのかもしれない。
作品での役割 すりガラスのはまった目の細かいガラス戸も、
その脇に突き出ている便所の換気筒も、
植わっているヤツデの一株も、
戦災で焼けなかった古ぼけた住宅街にはふさわしい
ありふれた道具だてである。

そういえば、わたしの家にも昔、
便所の換気筒の横にヤツデが植えてありました。
それは偶然なのでしょうか。
それともヤツデに除臭効果でもあったのでしょうか。

雪柳 バラ科  Spiraea thunbergili Sieb
採取作品 「縞模様のある手紙」
採取場所 芹川政夫が入院する病室
特  徴 川沿いの岩の上などに生える小低木。
雪のように白い多数小花が咲き、
葉が柳に似ているため、この名がついた。
作品での役割 絹子が手にしたお見舞いの花束の包紙を取ると、
チューリップの深紅と雪柳の白がぱっと拡がった。

一ぺんに春がきたという感じです。

ルリミ アカネ科  Lasianthus japonicus
採取作品 「幼い実」
採取場所 高知県T町
特  徴 山中にはえる常緑小低木。
5〜6月に白い花を咲かせ、
10〜11月には濃い青色の実をつける。
作品での役割 竹井銀子の娘の名前は「るりみ」といった。
「るりみさんしいうのは、しゃれた名前ですね。」
「わたしの郷里の方にルリミっていう植物があるんです。
青い実がなる木で、その実でままごとをしたり、
ころがして遊んだり・・・。」

「幼い実」とは「るりみ」の実のこと。

レンギョウ モクセイ科  Forsythia suspensa
採取作品 「誘拐者たち」
「縞模様のある手紙」
採取場所 都内 梅山邸(『誘拐者たち』)
目黒 城南外科病院(『縞模様のある手紙』)
特  徴 庭などにも植えられる中国原産の落葉低木。
3〜4月の開葉前に、黄色い花を咲かせる。
高さは2〜3m。
作品での役割 シンたちは、梅山のばあさんの猫メリイを誘拐し、
脅迫状を梅山邸に届けようとしたが、
家の中でばあさんは首を吊って死んでいた。
そして、茶ダンスの上にいけてあったレンギョウの花びらが
たくさん散っていた。(『誘拐者たち』)

ばあさんは、猫が誘拐されたショックで
自殺をしてしまったのだろうか。