仁木先生あれこれ1
原稿の書き方
数々の作品を残した仁木先生。
そんな先生が作品を書く際のことが「猫と車イス」に書かれています。
『 ベッドに仰向けに寝たままの姿勢で、左手でボール紙の台を支えながら、
右手でペンを動かすのである。
たぶんこれは幼いとき、兄に指導されながら
小学校の課程を勉強したときからの習慣だったろう。
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筆記用具はほとんどの場合万年筆だった。
仰向けになって書くためにペン先が上に向く関係で、どうしてもインクの出が悪くなる。
だから三重子はいくぶん古くなってインクが出過ぎるようになった万年筆を好んで使った。
真新しい万年筆ではどうにもうまく書けなかったようである。
それでいてボールペンは線の太さに変化がなさすぎるとといって使いたがらなかった。
ボールペンよりも鉛筆のほうがまだましだというのだ。
実際には鉛筆で下書きをつくることなどほとんどなかった。 』
(注・・・三重子とは仁木先生の本名。)
<「猫と車イス」のんびりスタートの章 後藤安彦著 より引用>
若くしてのご病気からこのような書き方をされたのでしょうが、普通に考えれば、なかなか器用です。
そこでわたしも同じような形で原稿を書いてみることにしました。
早速、ボール紙の台を持ち、そこに原稿用紙をつけて、一文字目を書こうとしました。
とにかく万年筆のインクの出が悪い。
新品ではなかったのですが、あまり使っていなかったからでしょうか。
インクが出ず、振っては書き、まだ出ず、また振って、・・・・。
やっと「猫」の字が書けると、またインクが出なくなり、また振って・・・。
そんなこんなで一段落。
タイトルの「猫は知っていた」という7文字を書くのに3分近くかかってしまいました。
慣れも必要でしょうが、長篇を書くのであれば根気も必要です。
現代であれば、音声で文章を書くソフトなどもあるので、このような書き方はしなかったでしょう。
←やっとここまで書きましたが、断念しました。